デザインの教科書 (柏木 博)

僕はこれまで美術館と言うやつが退屈でならなかった、真面目な話。
でも、それは楽しみ方を知らなかったから、と言える。楽しみ方は、この本が教えてくれた。

デザインの教科書

"美術館のコレクションからは、さまざまなデザイナーの思考(提案)を歴史的な流れに沿って見る事ができる。"
"美術館にあるコレクションは、使い手、つまり私たち生活者でなく、送り手、つまりデザイナーたちが考えた「心地原則の見本である。"
"そこに私たちは、デザイナーたちが何を心地よいと考えたのかを見る事ができる。"

そう。そもそもバックグラウンドあっての美術館であり、歴史的背景を知っていてこそ、多くを楽しめる場所なのだ。
歴史的背景まで丁寧に説明してくれる美術館ならいいが、どうにも一般的に美術館の歴史背景の説明はわかりにくいものが多い。

つまりは下調べをして、知りたくなったら行くべき場所、それが美術館だ。

美術館の楽しみ方は、"歴史の流れ"と"デザイナーの思考"を追う事。
歴史の因果関係をひも解くことは楽しい。物事には、原因と結果があるが、よくよく見て行くと実に明快だからだ。

人は「心地よさ」を求める。それをデザインするデザイナーがいる。
それが使い手(庶民)に向けられてデザインされたモノか、作家のオリジナリティを表現した観賞のためのデザインのモノかで、まずは大きく異なる。
一番初めに、これを理解した上で、美術館に行くと、大分違った見え方をしてくるはずだ。

現在は、モノがあふれ豊かになった結果、マーケティングとしてのデザインの色が強いと思える。
マーケティングのデザインなど知った事か、と思える。消費を目指したデザイン、そんなものに意味はない。
しかしそれは最近になって、だ。

50年前、いや100年前は違う。実用主義のデザイン、
在り合わせで心地よさを追求した結果のデザインが美術館には多く展示されている。

それを見に行こう。考えて、見る事で、新しい面白さの発見がそこにはあるはずだ。
ともかく、美術館へ行こう!